寒村自伝

 職工は文字通り昼夜兼行,わずかに深夜に時間の仮睡をとるのを許されたにすぎない。弁当なども深夜に食う分を加えて一日四食ずつ家族に運ばせ,数日間ぶっ通しの昼夜連続作業にもうこれ以上ははたらけないほど疲労した時,やっと帰宅を認められる始末であった。
(中略)
 日をおうて過激の度と加える労働が,職工の間に発病者を増すことはまぬがれ難い。脚気を患っている多くの職工が青竹の杖にすがって,工廠の門をくぐる姿を見るのは珍しくなく,新高のハッチを中甲板に降りると,青ぶくれした生気のない顔が悩む脚を投げ出して坐り仕事をしている。それを見ると,幽界にさもよう死霊に出会ったような不気味さを感ぜずにはいられない。

出版社岩波文庫
発行年1975年

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