ルポ 改憲潮流

 浦部法穂『全訂憲法学教室』(日本評論社,2000年)の序章第一節「国家と憲法」を引いてみよう。

 〈国家の本質は「権力」にあり,「権力」こそが国家の実体だ,ということである。「権力」とは,他者を支配できる力,あるいは他者に対して服従を強制しうる力であり,国家はそのための装置,つまり強制装置なのである〉

 〈そうであれば,国家というものは,「権力」の座にない(=支配される立場にある)私たちにとっては,本来,自分たちの側にあるものではなく,本来,私たちに対立する存在であるはずのものである。つまり,「国」というものは,本来,私たちにとって,「わが」といえるような存在ではない,ということである〉

 〈そうであれば,「国を愛する心」とか「国を守る必要」というのは,じつは「権力を愛する心」,「権力を守る必要」というのと同義になり,私たちには無縁の言葉であることが一目瞭然となろう。(中略)〉

 〈しかし,「権力」というものは,権力の側にある者の利益に仕えそのために濫用される,という性質をもっている。しかも,それは,最終的には「力づく」で人々を服従させるものである。したがって,「権力」は不可欠であるとしても,無条件に肯定できるものではない。「権力」の無条件的肯定は,もっぱら権力の側にある者の利益のための「力づく」の支配を容認することを意味するのであり,そのような暴力的支配が許されないことは,いまや,当然の前提とすべきであろう。そうであれば,「権力」にはすべての人に人間らしい生活を保障すべき義務があるのだ,ということを明確にし,さらには,「力」の発動が許される場合と条件をあらかじめきちんと定め,それらを遵守することを条件に特定の人々に「権力」行使を担当させる,という「権力」への縛りが,また,不可欠である。いわば,「権力」を,権力の側にない「ふつうの人々」(=人民)の利益のために仕えさせる「縛り」である。

 憲法は,まさに,こうした「権力」への「縛り」のためにある〉

 近代立憲主義の,以上が基本的な説明だ。
(同書,p.48-49)

出版社岩波新書
発行年2006年

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