歴史のための闘い

 歴史家であり続けながらも己の人生をまっとうしうるという自信を諸君に与えるためには、研究の最先端にいる人びと、すなわち船の舳先に立って絶えず水平線を凝視している人びとに歴史が現在提起している、生きた問題のいくつかを諸君の前で、そして諸君とともに検討する以外に方法があるでしょうか。

 と申しますのも、問題提起こそ、まさにすべての歴史研究の初めであり終わりであるからです。問題がなければ歴史はない。あるのは単なる叙述、雑多な史実の寄せ集めです。私が歴史を「科学」ではなく「科学的に行う研究」としたことを思い出していただきたい。「科学的に行う」とつけ加えたのは表現を飾り立てるためではありません。この言い回しは、問題を提起し仮説を立てるという、現代のすべての科学的営為の根底に認められる二つの操作を内に含んでいます。

出版社平凡社ライブラリー
発行年1995年

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